2026.01.20

(わたくし的あけがた話Ⅴ)

-136.5-

本日もあけました!
久方ぶりの番外編、第5弾です。

本日、『コピー年鑑2025』が発売されました。私が企画・コピーを担った「この新聞を燃やしてください。」(新聞広告:タイガー魔法瓶株式会社・魔法のかまどごはん)が収載されました。

コピー年鑑2025(編集 東京コピーライターズクラブ・発行所 宣伝会議)
・年一度の審査会を通過した優れた広告をコピー年鑑としてまとめ、広く紹介
・1963年の創刊から現在まで、その時々の時代性を広告という側面から反映した貴重なものとなっており、特に、コピーに関してはバイブル的存在
・本年度は4,400本を超えるエントリーの中から、受賞作品はじめ全675作品を収録
・2026年1月20日発行

昨年、「読売広告大賞」「朝日広告賞」「新聞広告賞」の3賞を受賞した広告のコピーが選出・掲載となり大変光栄です。今の時代、動画(インターネット×テレビ)を中心とした多面的展開が主流となっている中、新聞広告のみ、しかも実質”キャッチコピー1本”のシンプルかつ直球な表現での評価は大変価値あるものだったと感じています。

ですが、このコピーは単なるキャッチコピーとして開発したのではありません。せっかくの機会ですので、その背景を簡単に紹介します。

タイガー魔法瓶株式会社(以下、タイガー)の宣伝担当者より、新規事業として開発された「魔法のかまどごはん」についてのオリエンを2022年に受けました。従来の電気炊飯器とは一線を画す新発明として「電気やガスを使わない」「新聞紙(朝刊)一部でおいしいごはんが炊ける」という、まさに魔法のような代物でした。地震をはじめ自然災害の多い日本において、被災時の非常事態において電気が使えなくても、新聞さえあればご飯を炊ける。避難所など緊急時に配給される食事は、どうしても冷たいおにぎりやパンといった急場凌ぎのものとして贅沢は言えないのが当たり前でしたが、この製品はそんな時こそ「温かい」「おいしい」炊きたてのごはんが食べられるというもので、オリエン後日の試食体験の際には、そのおいしさに心底驚きました。本物のかまどによって引き立つごはんの味と香りに加え、新聞を燃やした煙のお陰で仄かな燻製感も相まり、電気炊飯器とは一味も二味も違う驚きの炊飯方法・低価格・美味を叶える素晴らしいものでした。

ただ、オリエン時のお話では、タイガー社内公募制度で事業化されたチャレンジングな製品であり、独自の販売戦略を採る状況から、いきなり新聞広告などマスメディア展開できる広告予算などありませんでした。その前提を重々承知・理解したにもかかわらず、オリエンを一通り伺った1時間のMTGの最後に、私はたった一言だけ投げかけました。
「9月1日の防災の日に”この新聞を燃やしてください。”という言葉とともに新聞広告を出したら話題になるかもしれないですね。」

MTGを終えた直後、間髪入れずに私の携帯が鳴りました。「澤田さん、さっきのめっちゃオモロイやん! ぜひやりたい!」と。
とは言え、新聞広告の予算はないんじゃ?と私は半信半疑でしたが、すぐに社内のCD(クリエイティブディレクター)に電話で状況を伝えたところ、「澤田くんのコピーでいこう! それを超えるものは出てこないよ!」との反応にて、一連のやり取りですべてが瞬時に決まったのでした。ものの5分ほどで。

とこれを読んで、「単なる思い付き」と思われるのが関の山と思いますが、実際にはオリエンを聞きながら、私の頭の中ではあらゆることが一気に巡り、確信を持って提言した総合企画だったのです。

・9月1日は「防災の日」であり、各新聞社が紙面特集を組む特異日であることから、本製品の特性との合致とともに、世間の耳目を集める絶好機
・新聞は、被災時でも -ページ数が最小限になっても- 避難所などに届くライフライン的なメディア
・しかも、必要な情報を届けるだけでなく、暖を取る布団代わりになったり、足元を守るスリッパになったり、掃除などにも活用できる”物理的”にも役立つ点で、唯一の実用的な媒体
・それが、今回の製品ではお米を炊く”燃料”にもなり、副次的には寒い時期であれば炊飯熱による暖も取れ、なにより困難な状況に置かれている人々へ心身を癒し満たす”温かくおいしい”幸福(厳しい状況下の束の間であっても…)を提供できる

・つまり、くどくど細かな製品説明をせずとも一瞬なにかと思わせる一言で特性をズバリ言い表し、掲載媒体の新聞まで一体に、すべてを言い尽くした直感的かつ論理的な広告(企画・表現)

ただし、広告には必ず「考査」という表現審査(公序良俗に反する等の不適切な表現・内容がないかチェック)があり、新聞社にとって大事な自社製品である「新聞」を”燃やす”など言語道断だとして非難の指摘・反発があり得ると容易に想像がつきましたが、上記のような「新聞だからこその独自の媒体特性を本製品とともに訴求でき、新聞のプレゼンスアップにつながる」として私は考査を「絶対通せる!」ことまで計算・確信した上で、オリエン最後に一言だけ申し上げたのでした。(実際、当時の私の会社内も新聞社の営業担当者も異口同音に懸念を訴えていましたが、私は全く意に介しませんでした。笑)

そして実現までに2年が経過しました。予算面に限らず、試作段階から最終製品化のスケジュール面などにより、クライアント担当者の想いはあってもなかなか具現化には至らなかったのです。余談ですが、オリエン後、ふと気になり調べたところ、翌年の2023年がちょうど関東大震災100年にあたることがわかり、奇遇にもタイガー100周年と重なる千載一隅の好機として強く提案しましたが、残念ながらその年には掲載ならず、奇しくも私が退職する2024月9月に滑り込みで日の目を見たのでした。

後になって振り返った時、最も素晴らしかったこととして改めて思うのは、それだけ長い時間が経つと当初の提案意図は風化してしまい、またゼロからの検討になってしまったり、”あるある”話で言えば「ほかにも代案がないか」と再検討や修正など入ったりするのが常ですが、私の25年間の広告業務で初の経験となる「5分で決まり、以後2年の時を経ても一切ブレることなく、そのまま形になった」本当に奇跡的な仕事だったことです。

極めつけは今回の年鑑の装丁です。ご覧の通り、2025年に世間で話題となった象徴的存在の「米」のデザインです! これはほかでもない「魔法のかまどごはん」のためのものではないですか⁈


マイフェバリットクライアントの、「米」を斬新な方法で炊くプロダクトの販売に貢献した、マイベストジョブという、マイマイ尽くしな経験となりました。

ご一読いただきまして、ありがとうございました

それではみなさま、よいあけがたを!