2025.09.11

シン・

-55-

本日もあけました!

前回、「シン・人類」と記しましたが、まさに社会のその先を行く”最尖端”を体現する存在を思い出しました。今年2月放送の「新プロジェクトX〜挑戦者たち〜」(NHK総合)の「ゴジラ、アカデミー賞を喰う~VFXに人生をかけた精鋭たち~」に登場していた若者です。
以下にその内容を紹介します。

・映画の視覚効果VFXにおいて、日本はハリウッドの20年遅れと言われてきた。
・1970年代、ハリウッド映画が日本中を熱狂させていた頃、スピルバーグ監督のSF映画の金字塔「未知との遭遇」に魂を揺さぶられた少年が、後に日本のVFX第一人者となる山崎貴監督。日本でいち早くVFXを手がけていた小さなスタジオ(株式会社白組)に入社したが、ハリウッドなど夢のまた夢。そのまた夢だった。
・実際、ハリウッドの大作では1,000人が投入されるが、白組ではわずか35人。映画「ゴジラ-1.0」は邦画最大規模の予算ながら、ハリウッドと比べれば、超低予算、超少人数。山崎監督は「背中が見えないどころか、周回遅れに近い。とてつもなく速いコンピューターも物凄い数揃えていて、差が開く一方。」と振り返る。
・そんな果てしなく遠いハリウッドの背中を追いかけるには、これまでにない才能が不可欠であり、山崎監督たちは才能を発掘すべく「SNSをチェックし、面白いVFXを作っている人にメッセージを送信する」というSNSスカウト大作戦に出た。
・そのメッセージを受け取ったうちのひとりが、「憧れの会社からメッセージをもらい、めちゃくちゃ嬉しかった。」と語る佐藤昭一郎さん。当時10代の学生だった。
・佐藤さんは小学生の時に山崎監督の作品を観てCGの世界に興味を持ち、中学生から無料ソフトを使って独学での映像制作をはじめた。大好きな山崎組のパロディーを作って、SNSにアップしていたのが、後に本人の目に留まることに。
・山崎監督曰く、「僕らが結構苦労して作ったシーンを学生が趣味でサラサラって再現してる。なんか楽しんでるなと思って。楽しんでてうまいやつって最高なんですよ」。そんな佐藤さんを切り札のひとりとして、映画冒頭に登場する架空の島「大戸島」をVFXで作り上げるという大仕事を託した。
・佐藤さんは、この仕事にかけていた。生まれは、宮城県荒浜で、小学5年生の時、東日本大震災が起き、家は津波に流された。そして、間もなく母親も病でこの世を去ってしまい、祖父母が親代わりとなったが、いつしか学校に通うのがつらくなった。そんな孤独の中、支えになったのは”VFXに没頭する時間”だった。
・本人曰く「学校行っても友だちいないし、ぼっちで本当にやることがないみたいな。その中でも自分がCG作っている間は、自分の世界に入れるじゃないですけど、本当に現実逃避したかったですし。」
・だが、その過去を周囲が知るはずもなかった。山崎監督の口からも「なかなか変人で、みんなと全然あいさつしないし。お昼休みにどっか遠くにごはん食べに行っちゃって2時間ぐらい帰ってこないことがあって、他のスタッフから「山崎さんが誘って入った佐藤なんですけど、全然あいさつしないし、大丈夫ですか?あれは」ってすごい言われて。俺もどうしようかなって思ってたんですけど。」というエピソードが出るほど。
・そんな状況を助けたのは、やはりVFXだった。無料ソフトを駆使し、植物のCGを作るのが異様に速かったという、その腕を買われ託されたのが、映画冒頭のVFX。
・「ちょっと無茶なものを投げたときの、投げられた人間がやれるやつだって信じることで、なんかすごい物が生まれてくるっていうのは当然あると思うんですよ。」と語る山崎監督。
・映画製作が追い込みを迎えていた中、佐藤もまた不安と闘っていた。しかし、植木職人と評されるほどの実力をいかんなく発揮し、実在感ある島を作り上げ、そこでゴジラを暴れさせた。それにとどまらず、あらたな才能をも開花させた。他のスタッフが何日かけても背景のCGを合成できないお手上げのカットという難題を、たった半日でやってのけた。


なかでも、佐藤昭一郎さんの「独学でVFXの技術を習得した」というのが、異次元ぶりなエピソードで
「YouTubeとかインターネットとかでCGの勉強をして」と本人が語る一方、山崎監督は「佐藤はちょっとおかしいんですよ。YouTubeみるとなんでも出来るようになっちゃうんですよ。寿司握るんですけど、ふつうの高級寿司屋と同じレベルの寿司を握るんですよ。どうやってその寿司の握り方を覚えたのって聞くと、YouTubeですって。YouTubeにのっていればなんでもできるようになるっていう。」との逸話を持ち出され、それを知った私はとてつもない衝撃を受けるとともに、感銘を受けました。

実は、山崎監督自身もその昔、日本ではまだほとんど使われていなかったソフトを「独学」で習得し、鬼才、伊丹十三監督の映画でVFXを任されるまでになったらしいのです。
このような小集団が作り上げた映画「ゴジラ-1.0」は、第96回アカデミー賞 視覚効果賞を受賞。日本のみならず、アジア初という快挙を成し遂げ、アメリカで日本の実写映画史上最高の興行収入を記録。あの夢のまた夢だったハリウッドを含め、数々のオファーが舞い込むようになり、山崎監督が少年時代に影響を受けた巨匠スピルバーグ監督に「3回観た」と言わしめるまでに。

山崎監督、佐藤さん(やほかスカウトされた若者も!)に共通するのは、「独学」。これこそ「シン・まなびそだち」なのだと感じます。デジタル社会の中で最尖端に位置し、離れ業を成してしまうこの感じ、最強の「ねこだま集団」としか思えません。

それにしても、今回の掲載ナンバリングが「55」・・・、「ゴジラ」の背番号でしたね。なんの因果か…とてもシンじられないシン境です。

ご一読いただきまして、ありがとうございました

それではみなさま、よいあけがたを!