2025.08.30

☆特別週間:DAY6

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8月最後の土曜日があけました。

今週月曜日から取り上げてきたのは、「防災の日」に重ねて、こどもたちの危機に焦点を当てた「もうひとつの防災の日」でした。しかし、それは紹介した数字にもありました通り、9月は大人にとっても同様の傾向がある、もはや日本社会全体の「防災月間」に値します(本来の自然災害に対する防災としては、実際に9月は台風や大雨が多いことから「防災月間」と謳って取り組んでいるケースもあるようですが)。
そんな「もうひとつの防災月間」について、再度捉えていきたいと思います。

実は、9月10日から16日は「自殺予防週間」であるのをご存知でしょうか。しかも、それは「自殺対策基本法」なるものが存在し、きちんと定められていることは、あまり知られていないように思います。

▼自殺対策基本法より抜粋

(自殺予防週間及び自殺対策強化月間)
第七条 国民の間に広く自殺対策の重要性に関する理解と関心を深めるとともに、自殺対策の総合的な推進に資するため、自殺予防週間及び自殺対策強化月間を設ける。
2 自殺予防週間は九月十日から九月十六日までとし、自殺対策強化月間は三月とする。
3 国及び地方公共団体は、自殺予防週間においては、啓発活動を広く展開するものとし、それにふさわしい事業を実施するよう努めるものとする。
4 国及び地方公共団体は、自殺対策強化月間においては、自殺対策を集中的に展開するものとし、関係機関及び関係団体と相互に連携協力を図りながら、相談事業その他それにふさわしい事業を実施するよう努めるものとする。

もともと自殺対策基本法が施行されたのは平成18年。以降、国内の自殺者総数は減少傾向にある一方、近年はこどもの自殺者数の増加傾向が続いている現状で、以前触れた通り、令和6年の児童生徒の自殺者数は、529人で過去最多となっています。
これは実に、平成30年以降、約43%増(最も数が少なかった平成5年と比べ約2.7倍)に及ぶ事態です。

こうした極めて深刻な状況において、やや気になる表現として「9月病」という言い回しがあります。確かに昔から5月病など、季節の変化と相まって、新学期・新年度の生活や労働の環境変化等により、人間の心身のバイオリズムが崩れがちな時期があるのも確かで、それを言い当てている表現としてはわかります。特に昨今は夏の暑さも異常なレベルに達し、かつて夏バテなどと言っていた次元ではない、熱中症で命を落とすことさえあるという外的要因の増幅も、心身の不調をきたす後押しとなっている面はあるでしょう。
ただ、気になるというのは、”病”と片づけてしまった瞬間に、そのニュアンスは多分に”個人の責任”によるものという印象が非常に強く滲み出ているように感じられてしまうからです。単なる環境変化のみならず、ゴールデンウイークや夏休みといった長い休みにおける生活リズムの悪化も一因としてあるのは否めないとしても、そこに比重が大きく置かれてしまっている怖さを感じます。それをきちんと管理・自制、あるいは”気合い”さながらに乗り越えている人たちがいるという比較対照の意図が見え隠れする、所謂日本的な表現にさえなりかねないからです。
なぜこんなことを言っているのかと思われるかもしれませんが、そもそもこれだけ自殺大国ニッポンと称されるほどの事態に陥り、中でもこどもたちのその数が過去最悪(少子化で母数は減っているにもかかわらず!)という状況は、何度も申し上げる通り、完全に社会の問題であることに異論を挟む余地はなく、それを”病”という表現で埋もれさせるのは、意図せずとも責任逃れになりかねない、うやむやに埋もれさせてしまいかねない大変危険な言い回しだと思うからです。そういった根っこの意識レベルから考え、向き合っていかなければ、本当に歯止めが効かないどころの騒ぎではなくなってしまうでしょう。

ご一読いただきまして、ありがとうございました

こどもたちとともに、日本のあけがたをあけたい