2025.08.05
シンプル
-30-
今日もあけました!
前回、『ねこだま(猫魂)なおとな』認定を勝手にさせていただきましたが、これを皮切りに私が感じる『ねこだまなおとな』を -ランダムに- 挙げさせていただきます。
私自身、昔から聞かれて困る質問は、「尊敬する人は?」でした。正直、すごいと思う人や見習うべきと感じる偉人のような歴史上の人物、あるいは現代において各界で活躍する著名な方々等は数多いても、「尊敬」となると、どうしてもピンと頭に浮かんでくる人はいないという感覚でした。
それが社会人になって、”この人は”という方が現れました。現れたと言っても、今は亡き存在「白洲次郎」さんです。
それまでは深く知らなかったのですが、その生き方を詳しく知った時に、心の底から共感でき、魅力的だと感じました。その決定的な理由は「プリンシプル」です。日本語に訳すと、原理原則や信条といったところですが、私はものすごく大事なものであると感じていますし、実際に大切にしてきました。
正子夫人が「まことにプリンシプル、プリンシプルと毎日うるさいことであった」と回想したほど、自分の信じた『原則』には忠実だったと言います。また夫人は「直情一徹の士(さむらい)」とも評しており、ともすれば「頑固」という意味にもなるわけですが、それが単になにかに縛られるかのように拘泥するものなのか、長い目で見た時に自身が正しい道と信じるものがあるのか、で全く異なると私は思っています。白洲次郎という人は、確実に後者であり、周りには見えていない先を見通す力を持って、それが見えていない多くの人達に、強烈とも言えるほどの信念で対峙していたのでしょう。このような先見性や精神性だけでも充分に”ねこだましい”だと言えますが、その生き様のねこだまっぷりは半端ではありません。
イギリスに渡り、ケンブリッジ大学で学ぶも、 家業が倒産したため帰国することになりましたが、職業は安定せず、英語力を活かしながらも、英字新聞の記者、英国商社、日本の貿易会社を転々とする状況。「そういういわば風来坊的人間に、目をつけたのが吉田茂氏である」と正子夫人はおっしゃったようですが、夫人との出会いによって後の内閣総理大臣になる吉田茂氏とも出会ったのです。終戦直後の内閣で外務大臣に登用され、GHQの矢面に立ったことは、語り草ともなっています。日本国憲法の成立に深くかかわり、占領下でありながら、言うべきことを堂々と主張する白洲次郎にGHQ側は手を焼き、アメリカ本国への報告に「従順ならざる唯一の日本人」 と言わしめた話はあまりにも有名です。
でも、それ以上に私が畏敬の念を抱いたのは、
第二次世界大戦の参戦当初より日本の敗戦を見抜き、あっさり当時の職を辞して東京郊外の鶴川に移住。食料不足になることを見越して、自給自足の農業に従事した。
というエピソードでした。これは相当に自分の直感を信じられる人でなければできない決断力と実行力であり、名誉や功績とは距離を置いた”人となり”のすべてが凝縮されているように思えるのです。
政界入りを求める声が強くても生涯在野を貫いたり、遺書も「葬式無用、戒名不用」のたった二行だけを残したりといった、無二無三な人生は最高に素敵だと思います。
かみごたえのある人生の神髄。
「プリンシプル イズ シンプル!」
ご一読いただきまして、ありがとうございました
それではみなさま、よいあけがたを!