2025.10.14
栄えある
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本日もあけました!
今回のノーベル賞受賞と、昨今の日本人の受賞ラッシュに世間も沸き立っていますが、約1か月前にも日本人が表彰された、もうひとつの素晴らしい世界的な賞があります。
それは、1991年にノーベル賞のパロディーとして創設された「イグ・ノーベル賞」。「人々を笑わせ、考えさせる業績」を毎年10件程度表彰するもので、今年で35回目の開催を迎えました。アメリカのユーモア系科学雑誌「Annals of Improbable Research」(風変わりな研究の年報)が主催し、授賞式もユーモア満載のとてもユニークな賞で、日本人はなんと19年連続で受賞しているのです!!
俗に「不名誉」といった否定的な意味合いが強い印象の同賞ですが、本当にそうなのでしょうか?
今回の受賞研究内容をみてみましょう。
▼「シマウマ模様の塗装による牛の吸血昆虫対策(Cows painted with zebra-like striping can avoid biting fly attack)」(英語科学雑誌PLOS ONE掲載)に係る業績
・シマウマのようなシマ模様を牛の体表に塗装することで、吸血昆虫(サシバエ、アブ等)による被害を軽減させる効果があることを解明した研究
・実証試験は2年にわたって2回実施し、2019年に論文発表
・各年、黒毛和種繁殖雌牛3頭ずつ(計6頭)に、「白シマ区」は白色の水性ラッカーを、「黒シマ区」は黒色の水性ラッカーを用いてフリーハンドで幅4~5cm程度のシマ模様を施した。(「対照区」はシマなし)
※体表が黒いため「白シマ区:白黒のシマウマ模様」「黒シマ区:黒黒の縞模様(あまりシマがわからない)」「対照区:なにもしない通常の黒い牛」の3種類を比較(「黒シマ区」を設定したのは、シマ模様を施すラッカー自体が吸血昆虫に影響を及ぼすか否かを確認するため)
・観察者は試験期間を通して1人とし、記録した忌避行動は、首振り、耳振り、足踏み、皮膚の振戦および尾振りの5行動
・忌避行動観察を終えた後、1頭ずつ牛体の右側をデジタルカメラで写真撮影し、後日その写真を用いて牛体に付着した吸血昆虫数を計測
・付着吸血昆虫数は、「黒シマ区」112、「対照区」129に対し、「白シマ区」では56と約半数まで減少
・30分あたりの忌避行動回数は「黒シマ区」54回、「対照区」53回に対し、「白シマ区」40回と約25%減少
結果は、数字の通り、白黒はっきりしました!
しかも、この方法は薬剤を使用しないことから、薬剤耐性といった環境問題をも回避できる点で、健やかな発育に関わる牛や飼養者のみならず、環境にも優しい「三方よし」の新たな吸血昆虫対策技術になり得ると期待されています。
さて、いかがでしたか? 私には、ノーベル賞に負けず劣らず、はっきりと人明開花の音が聞こえてきました。不名誉どころか、本当に面白いテーマ性で、身近な生活に密着した視点で惹きつける「ねこだま」なサイエンスです。
その素晴らしい功績を称え、国内においても表彰が本日あるそうです。
▼愛知県公式HP(ネットあいち)より抜粋
愛知県農業総合試験場において研究に携わった、筆頭論文執筆者の国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構(元愛知県農業総合試験場)の兒嶋朋貴(こじまともき)さん始め共同研究論文執筆者に対し、知事が、その功績をたたえる愛知県特別表彰を授与します。
日時:2025年10月14日(火曜日) 午前11時45分から正午まで
改めて関係者の皆様、おめでとうございます!! ”ちゃんとした賞状”を受け取れるようで良かったですね。
と言うのも、肝心の本家の授賞式では、
・賞状が「ただのコピー用紙」
・授賞式出席にかかる旅費や宿泊費は「全て自己負担」
というユーモアに徹しているからです。
極めつけは、その賞金が「10兆ジンバブエ・ドル札」ということ。ハイパーインフレで価値が暴落した末、2015年に廃止となったジンバブエの自国通貨のため、ほぼ無価値である上に、今は使えない紙幣です。2015年から毎年イグ・ノーベル賞の受賞者へ副賞として贈呈されているとのことですが、今年はなんだか意味があるように感じられてなりません。ジン”バブエ”って、”ハエ”と”アブ”の研究を文字ってるようで、そこはかとないユーモアに見えてしまいました。まあ、あぶく銭がいくらかということよりも、純粋に栄えある賞として心からの賛辞を送りたいと思います。
ご一読いただきまして、ありがとうございました
それではみなさま、よいあけがたを!