2025.10.10

覆す

-74-

本日もあけました!

祝! ノーベル化学賞の受賞!! 京都大学高等研究院の北川進特別教授(74)、誠におめでとうございます!
開発をされたのは「金属有機構造体(MOF:Metal Organic Frameworks)」とも「多孔性配位高分子(PCP:Porous Coordination Polymer)」とも称される、ナノメートル(10憶分の1)のサイズで非常に小さく規則的な穴を持つ、多孔性金属錯体。無数に並ぶ格子で区切られた微細な空間の「孔」(穴)が並んだ「ジャングルジム」のような構造体の多孔性材料で、金属イオンと有機分子を組み合わせた画期的な新材料の合成に成功したというのです。

金属イオンを利用して有機化合物を3次元的に組み上げたこの材料は、微小な穴が無数に空いた多孔性構造により、二酸化炭素や水素など狙った物質をその穴に吸着・貯蔵できる極めて特殊な素材で、有害物質の除去や二酸化炭素の回収、砂漠の空気からの水分採取などのほか、水素の貯蔵などエネルギー分野での応用も期待される技術だそうです。

ここに至るまで、北川さんを育み、支えてこられた背景には

・中学生のころから読書が趣味だった
・大学一年生のとき、近くの書店でノーベル物理学賞を受賞した湯川秀樹博士の著書「天才の世界」「続天才の世界」「続々天才の世界」を読んだ
・その中で、中国の思想家・荘子が説いた「無用之用」(役に立たないように見えるものも、実は役に立つ)という考え方を知った
・たとえば、老子には「埴をせんして以て器を為る。其の無に当たりて、器の用あり」。”粘土をこねて器をつくる。器の中はなにもない無用の空間に見えるが、空間があるから器として役立つ”の意

といったことがあったようです。

そして、後進人材への温かい想いも宿す、そのお人柄を表すような数々の言葉は会見での発言含め

「研究はエンジョイせなあかん」
・「僕が評価されたのは全部50(歳)からや」
・「新しい分野をつくるという意欲で取り組んできた」

・「無用之用。今役に立つと思われていないけれども、違う視点でやればそちら側が非常に大きくなるということもあり得る。すでに皆さんがいっぱいやったからもうやることはないと諦め気分にならずに、ますますチャレンジ精神でやっていただきたいというのが私が若い人にいつも希望すること」
・「興味を持って、挑戦する姿勢。指導者にはそういう姿勢、ビジョンが必要」
・「幸運は準備された心に宿る」(海外の細菌学者の言葉を引用)
・「育っていく課程で、いろいろな経験をするけど、それを大切にすることで将来の花が開くと言いたい」

また、自身の研究が認められていない時期があった中でも

・「自分の感性を信じること、チャレンジすること、興味(の3つ)が融合して、私自身の方向性を支えた」

実際、1997年に「気体を吸着する多孔性金属錯体を作製した」と世界で初めて発表すると、活性炭やゼオライトといった代表的な多孔性材料と比較され、
・「わざわざ有機物で高い物を作って何になるのか」
・「お前は間違っている」
と厳しい批判を浴びせられ(米国で開かれた研究者の会議では発表するそばから、また朝食の席でも)
・「新しいものが出るとたたかれる。日本でもウソだと言われた」

それが一転、今では年間8~9千もの論文が発表されるほど世界中で激しい競争が起きているというのです。

「地下資源を持たない国でも地球の恩恵を受けられる。空気のようなものを自由に使える技術があれば、領土問題や紛争も起きない」
・「サイエンスが平和に貢献する時代になってきた。若い人が何十年もかけて実現する必要がある」

多孔性材料を使って空気から炭素など資源になる物質を取り出せれば、資源やエネルギー、環境、医療などの問題解決につながる、と社会や若者の未来を本気で考える「ねこだま」な科学者です。

「ノーベル賞をもらうっていうかそういう発表されるとですね、今までただのおじさんがですね、急に変わるんですよね、取り扱いが。」

これまでの科学の常識、固定概念を覆す大発見は、ただのおじさんの取り扱いまでも覆すものだったんですね。笑

ご一読いただきまして、ありがとうございました

それではみなさま、よいあけがたを!