2025.08.06
ただものでない
-31-
今日もあけました!
本日紹介したい『ねこだまなおとな』は安藤忠雄さんです。
白洲次郎さんとは、奇しくも実家が貿易商という共通点があります。
安藤さんは小学校時代から一貫した勉強嫌いで、その積み上げの結果、学力学歴は伴わず、大学にいかずに結果として”独学”で建築家になったという経歴の持ち主です。なかでも、工業系の高校に進学後、双子の弟の影響からボクシングをはじめ、17歳でプロボクサーになったという紆余曲折ぶりは、異色中の異色ですね。
ただ、その強烈な印象以上に、私が大いに注目する点は、建築家になりたいと思ったきっかけが、中学2年生の時にあったという話です。近隣には木工所や鉄工所、ガラス屋などが点在し、さまざまな業種の職人たちが暮らし、ものづくりの現場を間近に見ながら育ち、毎日のように木工所で木端を使った工作で遊んでいたそうです。実家の長屋を改築する際に、若い大工が昼食もそこそこに、一心不乱にモノづくりに勤しむ姿を目の当たりにして、そのひたむきさに感銘を受けた。その環境こそが「まなびそだちの場」であり、将来を形作る原体験となったのです。
また、20代で世界を旅した際に訪れたインドのガンジス川の岸辺で
「人生というのは所詮どちらに転んでも大した違いはない。ならば闘って、自分の目指すこと、信じることを貫き通せばいいのだ。」
という信念を持つに至ったそうです。そう、まさに「プリンシプル」が定まった瞬間です。この信念が、安藤さんのその後の生き方や働き方を通底し、「常識外」の道を辿る軌跡につながったのだと思います。
そして、28歳の頃、自身の事務所を立ち上げたものの、仕事はまったくない状況の中、大阪周辺の空地を見ては勝手にその土地の持ち主に「こういう設計をしませんか?こんな家を建ててみませんか?」と押しかけ提案。見ず知らずの相手からは当然「なにを考えているんだ!」と言われる始末。当然の如く断り続けられても、なんのその。簡単にめげたり、やり方を曲げたりなんていうことはなく、
「仕事は待っていて来るものではなく、自分で創り出していくもの。創り上げていくもの。相手から依頼されて来るものではなく、自分でこういうものを創りませんかというものを組み立てていって、”じゃあやろう!”という人を探す。」
これぞ、仕事の神髄ですね。なにより心震える言葉は、
「断られ続けても、その前に考えていることがある。それが財産になっていく。」
本当にその通りだと、沁み入ります。
1976年、出世作となった「住吉の長屋」はみなさんの知るところです。実際に住まわれている依頼主もすごい方だと思いますが、当時の建築界の常識を打ち破るものとして、安藤さんの信念が成し得た業でした。
ただものでない忠雄さん、明らかに『ねこだまなおとな』です。
ご一読いただきまして、ありがとうございました
それではみなさま、よいあけがたを!